個人的「2012年の本ベスト5」を選んでみた
さて、ベスト5を選定しようかと思うも、昨年の半ばにKindleを購入し、また、今年は転居を控えて書籍をあまり購入・読了できなかったので、あんまりないかなーと思うも、まあそれなりに読んでいないわけではないのだし、中には大変感銘を覚えたものもあったので、予定通りざっくりとベスト5を挙げてみたいと思います(booklogで書いたベスト3)。
1 渡邊幹雄『リチャード・ローティ - ポストモダンの魔術師』
リチャード・ローティ=ポストモダンの魔術師 (講談社学術文庫)
- 作者: 渡辺幹雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/11
- メディア: 文庫
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この本の原著は1999年に刊行されたものなのですが、今年になってようやく講談社学術文庫より文庫化され、僕自身それで読んだので、ランキング入り。というか、1位。
リチャード・ローティは、2007年に物故したアメリカの思想家です。彼の『偶然性・アイロニー・連帯』を初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。自分があれこれと考えをめぐらせていたり、思い悩んでいたりしたこと全てに対して、より優れた回答がそこには書かれていたのでした。昨年は、サンデル教授の本が流行ったりしましたが、ローティこそもっと読まれてほしいと切に願います。
その勢いで、刊行されているのは知っていたものの放置していた2冊のローティに関する研究書も、同時期に読んだのでした。
- 作者: リチャードローティ,Richard Rorty,斎藤純一,大川正彦,山岡龍一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/10/26
- メディア: 単行本
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リチャード・ローティ―1931-2007 リベラル・アイロニストの思想
- 作者: 大賀祐樹
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2009/09/20
- メディア: 単行本
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- 作者: 安部彰
- 出版社/メーカー: 生活書院
- 発売日: 2011/04
- メディア: 単行本
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2 エットレ・ソットサス『夜ノ書』
- 作者: エットレソットサス,Ettore Sottsass,東暑子
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 2012/07/04
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モダン・デザインに興味のある方にはお馴染の、戦後イタリアのプロダクトデザインを率いた巨匠、エットレ・ソットサスの自伝。この本は、いつものように書店をぶらぶらしている時に見つけて、明らかに面白いに違いないオーラを放っているのを即座に購入したのですが、その直感は完全に当たり、比類のない自伝文学を楽しむことができたのでした。
デザイナの自伝であるにも関わらず、有名な戦後の活躍ぶりはほとんど語られることなく、著者の青春時代である戦前・戦中の経験を語る文章がほとんど。異言語と、ソットサスを囲んだ様々な女たち。砲弾の飛び交う戦場、それなのに奇妙にあっけらかんとした著者の文体は、本当に美しい。ヨーロッパの知性というものの底知れない凄さをあらためて見せつけられた一冊。
ソットサスの業績を知らない向きには、以下の書籍が役に立つでしょう。
- 作者: ジャンバーニー,Jan Burney,高島平吾
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 1994/11
- メディア: 単行本
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- 作者: アンドレアブランジ,ミルコカルボーニ,横山正
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 2000/04
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3 エリック・リース『リーン・スタートアップ』
リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
- 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/04/12
- メディア: ハードカバー
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ビジネス書のようなものをこういうランキングに挙げるのは、個人的な趣味からいってあまり好きではないのですが、今年はしかたがないでしょう。仕事のしかた、考え方に大きな影響をおよぼされています。そのあたりは先日「書評『Running Lean 実践リーンスタートアップ』」というエントリで、今年の取り組みを総括した通り。この本は、原書でも、4月に刊行された訳書でも複数回読んで、今年、一番血肉となったものだと思います。
そのエリック氏が監修するシリーズの一冊として刊行された『Running Lean』や、その元となった『ビジネスモデル・ジェネレーション』は、ともすれば技術に偏向しがちな僕の性質を、今年、広い世界に向けて解き放ってくれた本でもあります。技術者としては元より、仕事をする者としてより一層研鑽に励みたいと思います。
Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)
- 作者: アッシュ・マウリャ,渡辺千賀,エリック・リース,角征典
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2012/12/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール,小山龍介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 大型本
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4 ばるぼら『岡崎京子の研究』
- 作者: ばるぼら
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2012/07/11
- メディア: 単行本
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今年は、「ヘルタースケルター」の映画公開により、再び岡崎京子さんの仕事に注目が集まった年でした。長年のファンとして、とてもうれしく思うところです。「映画「ヘルタースケルター」を見て岡崎京子を知ったひとへ送る数冊」なんてまとめを書いたりもしました。
本書は、あのばるぼらさんが書いているからには一筋縄ではいかない、驚異的な博捜による膨大なデータが詰まった本。年来のファンでも知らないことがたくさんあり、また、70年代後半〜90年代半ばにかけてのサブカルチャを、岡崎京子という軸から眺める本でもあります。読んでいてひたすら楽しい「研究書」。
- 作者: 岡崎京子
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2003/04/08
- メディア: コミック
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- 作者: 岡崎京子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2004/02/21
- メディア: 単行本
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5 小島寛之『数学的推論が世界を変える』
数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書 394)
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/12/06
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平易に数学を語らせたら当代一であろう小島先生による、最先端の金融技術の紹介と思わせて、その実、ガチな数理論理学の入門書であるという本。金融まわりの話ももちろん面白いのだけど、そこで使われている理論、数学的ベースが、自分自身、興味をずっと抱いていながらも、なかなかちゃんと取り組めてなかった話なので、ひたすら興奮を覚えながら一挙読了したのでした。
昨年、前職の同僚らと『論理と計算のしくみ』読書会を行うも、ついていけずに断念するという苦い思い出のある分野なのですが、なぜか個人的に、ここにとても大切なものがあるはずだという確信がある分野でもあるので、本書でも紹介されていた鹿島亮『数理論理学』をじっくり読んでみて、少しでも理解を深めることができるよう、がんばっていきたいものだなあと思う次第です……。
- 作者: 萩谷昌己,西崎真也
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/06/27
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- 作者: 鹿島亮
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 2009/10
- メディア: 単行本
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