うつわ暮らし
なぜそうなったのか、はっきりしたことはまったく憶えていないのだけど、ともあれふとしたきっかけで料理をすることに楽しみを見出しはじめ、この数ヶ月、最初は野菜の切り方すらよくわからないまま、かつてひとのやるのを見ていた、あるいは、ふだん食べなどするものの記憶をたよりに、見よう見まねで食材を、文字通り不器用にこねくり回しながら、なんとはなしにそれっぽいものができると喜び、はたまた、簡単に思えたものがまったくうまく形にならないことに落ち込んだりしながら、そうなってくると今度は、作ったものを盛るうつわにもこりたくなってくるのが人情というもので、かつての読書により、うつわの道にだけは足を踏み入れまいと薄く誓ったことを簡単に忘れ果ててしまい、少しずつ、しかし何事にも飽きっぽい自分にしてはかなりの熱の入れようで、その道にハマり始めているところです。
白洲正子、青山二郎といったひとたちの本にはかねてより親しんでいましたが、それはまあ、いってみれば文学的な親しみかたというものであって、そもそも料理を作ったり、また、食べたりといった実地の経験によって、つまりうつわを使ってみて得たというような知識ではないのですから、もの自体を知らず、まずはあれこれと本を読んでみるところから始めなければならないのであってみれば、目についたものにあれこれとあたってみるわけです。Discover Japan誌のうつわ特集は、なぜか浮ついたマガジンハウス風のノリがやや鼻につくものの、うつわの基礎からやきものの様式、各地方のやきものの特徴、果ては読谷あたりのやちむんまで広く取り上げるという目配りで、まず読んでみるものとしては出色の出来栄えだと思います。より細かくは、類書は多いのでなんでもいいですが、『よくわかるやきもの大事典』のバランスのよさにひかれました。
Discover Japan (ディスカバージャパン)2 (エイムック 1614)
- 出版社/メーカー: エイ出版社
- 発売日: 2008/10/28
- メディア: 大型本
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- 作者: やきもの愛好会
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2008/11/21
- メディア: 単行本
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また、さらに掘り下げてうつわを見ていくとなると、どうしても各種様式の歴史や、あるいは、骨董という存在を避けて通るわけにはいかなくなってきます。本格的に知識を得ようと思えば、少し高いですが、こんな本を手に取る必要も出てくるでしょう。
- 作者: 荒川正明,金子賢治,伊藤嘉章
- 出版社/メーカー: 美術出版社
- 発売日: 1998/10/16
- メディア: 単行本
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- 作者: 出川直樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/02/11
- メディア: 単行本
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うつわをあれこれと見ていくと、自分なりの好みができてくるというものですが、まあ先達の峰はなかなかに高くして、一朝一夕で超えることなどできないのであってみれば、虚心坦懐にいいところは学ぶべきでしょう。というわけで、いろいろとリソースはあるだろうけれども、我々はここで、そもそも料理から入った実用を第一とするうつわ愛好家を目指すのであるのですから、まずはこんな書籍に学んでみるのがよいでしょう。そのいちいちを、是非とも入手したいと思うこと、必定です。
- 作者: 平松洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/04/25
- メディア: 文庫
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あなたはもちろん、おいしいものが好きでしょう。さらにそれを、家で、手軽に味わうことができたならば、それに勝るよろこびはないと思います。しかし、省みてください。あなたの使っているうつわ、だいじょうぶですか? 100円ショップや無印良品、がんばってもせいぜいたち吉で買ったようなしょぼいうつわが、せっかくの料理を台無しにしていませんか? うつわに対するセンスを磨けば、もっともっと、家で食べるごはんがおいしくなります。この日常が幸せで充実していることが、なによりも素敵なことなのだから、ふだん使っているうつわも見直してもらえたら、と思ったりします。
というわけで、ここ最近買ったものを列挙してみましょうか(中には「うつわ」でないものもありますが)。我ながら、よくぞ買ったものだと思います。