シンガポールレポート(2013/06/06〜06/11)
@hsbt、@kurotakyとシンガポールにいってきたので、社内ブログにポストしたレポートから問題なさそうな部分を抜粋して、ブログエントリとします。
- そもそもの目的
- 状況視察
- Web業界事情
- 所感
旅行記っぽいものはあとで書く。
そもそもの目的
RedDotRubyConf 2013で、Rubyに関する発表を行った。
カンファレンスの内容については、@hsbtさんがあとで詳細にレポートしてくれるでしょう。
状況視察
シンガポールのWeb業界の現状について少しでも情報を得るべく、現地の会社等訪問しました。
Odd-e
元は1999年にオランダで起業し、現在はシンガポールに本拠地を置く、スクラム等のアジャイルプラクティスのコーチングを行っている会社。RedDotRubyConfでプランニングポーカーを配っていた時に話しかけた縁で、会社訪問。
彼らのコンサルティングの相手は主に、銀行等のエンタープライズWebサービス開発に対するもの。開発者の構成が自然に多国籍の数百人単位になるため、組織作りが課題となっている。国籍構成は中国やベトナムが多いとのこと。コンシューマ向けWebサービスでは、ソーシャルゲームが主。
日本(というか我々)の問題としている課題とはスケール感が圧倒的に違っていて、ただただすごいと驚くばかりだったが、やっていること自体は当たり前だけどそんなに変わらない。国籍や場所が違っていても、できるだけone team/one locationにしてコミュニケーションを活発化する。
Burpple
2011年12月に創業した若いスタートアップ。日本でいうところのMiilのような、食べ物写真を起点にコミュニケーションをする、SNSアプリを提供するモバイル専業サービス。@chicken_guyという日本人男性が早いうちから社員として参加しており、彼とRDRCで知り合いになり、招待いただいて訪問。
シンガポールは自炊よりもむしろ外食が盛ん。そのため、外食をきっかけにしたSNSという発想(なんだと思う)。現地の店舗と提携してのキャンペーンやInstagramの写真を取り込む機能を作ったり等、様々な活動で浸透を図っている。去年12月にVCの資金入ってがんばってるところ。現状は国内を中心にユーザ獲得につとめている。
現地のWebサービス一般として、FBやTwitterを除くと、各ジャンルで圧倒的に強いというサービスはないとのこと。シンガポール初のスタートアップのバイアウトも、大きな額としては「食べログ」のようなスタートアップをSingTelというドコモみたいなところが買ったぐらい。
シンガポールの人口が500万強ほどなので、国内だけでは成長が見こめないので、ゆくゆくは国外へも進出していかなければならない。
SingTel innov8
SGにおけるドコモのような会社が運営するインキュベーションセンター。シンガポール国立大学などと提携して産学連携でスタートアップの育成を図っている。彼らの出資するスタートアップがシェアオフィスのような形で仕事をしている。
前述のBurppleと同じく、innov8もOne-North駅近くの同じ建物内にあり、そのビル自体がWeb系、ゲーム系のスタートアップなどが入居するインキュベーション施設のような感じ。
innov8で仕事しているスタートアップの様子は上記の写真のような感じ。主にモバイル系Webサービスのスタートアップが2, 3人のチームで集まっている。中には主に欧米人のみで構成されているチームもあるようで、みんな静かに仕事している。
innov8には、オフィスだけではなく会議室やリラックススペースも用意されていたり、また、現地のエンジニア等を集めたミートアップを行うスペースがあり、Rubyなどの他、なぜかTumblrのミートアップが行われたりしている。
その他聞いた話
RDRCには、cakesのエンジニアさんがきていた。きいてみると、2ヶ月ほど前に、そのひとともうひとりとでシンガポール進出してきたそうだ。「グローバルにやるには海外で!」というわけで、ふたりで、まだ特にオフィスをかまえるでもなく、図書館やスタバなどを転々としながら仕事をしているそうだ。将来的には現地でオフィスをかまえ、採用していきたいとのこと。
また、クラウドワークスのひともカンファレンスにきていた。RDRCの開催日の周囲にアドテク系などのビジネス系イベントが複数あるようで、それらに参加するついでにきたとのこと。アドテク周りは話をきけなかったが、innov8にもいくつか入居しているようで、勢いがあるようだ。
Web業界事情
ごく少数にヒアリングした内容なので確かではないですが、わかったところまでで考えてみる。
現地スタートアップ事情
innov8のインキュベーションセンターにいるスタートアップたちは、国立大学等の産学連携による資金を得て最初のラウンドを始めるのが一般的。1年で300万円ほどの金額を4回にわけて助成され、成長を図る。そのように国を挙げてのWeb系セクタへの投資が行われているため、スタートアップは盛ん。
Webサービス
前述の通り、各ジャンルにおいて決定的なサービスはあまりない状況。スタートアップのラインナップは各ジャンルにわたり、特にモバイルアプリが盛んなようである。国柄により、最初から国外を含むアジア全般をターゲットにしている。
- Tech in Asiaのシンガポールカテゴリ: http://www.techinasia.com/tag/singapore/
人的リソース
シンガポールは英語が公用語のひとつであるため、教育を受けた人々はみな普通に英語ができる。同族間でのプライベートな付き合いでは民族の言葉で、仕事や他民族も含む場所等では英語で会話している。公用語が英語であり、また最初から国外もターゲットにしているため、最初から英語でサービスを開発している。
きいたところによると、現地のそれなりに優秀なエンジニアで、年間給与はS$60,000ほど。日本よりは安いようだ。全般的に温和で優秀なひとが多いように思える。
下記ジョブボードを見るに、シンガポールのみならず周辺各国において求人が盛ん。開発言語は、サーバサイドはRuby + Railsがほとんど。
- RedDotRubyConf 2013でのジョブボード: http://instagram.com/p/aSTs1mTQ5e/
所感
都市全体の、圧倒的に成長している感じは、日本にはもう20年以上見られないもの。郊外のみならず、街の真ん中でも巨大な建築がどんどん施工されており、エネルギーを感じる。大学を中心とする産学連携にせよWeb業界にせよ、最初から相手がグローバルであるため、日本とは全然問題意識が違うようにみえる。
サブカルチャ全般について、すくなくとも街中の感じを見る限りまったく興味がないようにみえ、そうなると日本は、ひとびとが礼儀正しいとかそういったところ以外では、経済的な面ではほとんどアドバンテージがない。ひとりあたりGDPも既に抜かれている。彼らは英語もできるし、いろいろな面でまったくもって負けているし、まさに日本の落日だなーという思いをあらたにした。
そういうひとびとと伍してこれからはやっていかないとならないのだから、もっと自分自身もがんばらないとマジでヤバいなと強く感じた旅だった。
シンガポールの歴史については、以下の本がコンパクトかつわかりやすくてオススメ。ちょうど行く前のタイミングで刊行されたので購入して読んだのだけど、これを読んでいて非常によかった。
- 作者: 岩崎育夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/03/22
- メディア: 新書
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