舞城王太郎・著『熊の場所』
- 熊の場所
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- 舞城 王太郎
- 単行本
- 4062113953
- 2002/10
- ¥ 1,680
- 講談社
本書は舞城王太郎さんが「群像」とかに書きはじめ、純文学界隈に接近してったころの短篇を集めたものです。以下の 3 短篇が収録されています。
- 「熊の場所」
- 「バット男」
- 「ピコーン!」
この短編集の少し後に刊行された『阿修羅ガール』(新潮社・刊)にて、三島賞を受賞しました。
今作や上述『阿修羅ガール』あるいは最近作「みんな元気。」(「新潮」9 月号所収・単行本未刊行)を通底する、本作家の素晴らしいところであるなぁと思えるのは、やはり子供や若者たちの描きぶりだと思います。「現代の若者を描いた云々」とかいいながら結局は安易におセンチになってしまう、単なるオッサン作家の自己投影から遠くはなれた、本当にわけのわからない存在が描かれているのが面白いなぁ、と。そのオッサン的構図って、つまりは 90 年代中期に流行った「援交とかバンバンしちゃって、道徳から自由であると思われている子たちも、なんだかんだで自分が傷ついていってるとか感じちゃうもんなのよね」的な馬鹿げた話なわけで(中にはオバサンがそゆ話書いたりもしてたけどね。某助教授のオクサンとかさ)、そんな中途半端なやつを小説で描かれても意味ねー。どうせならもっとムチャな、真にウザい存在を描けよ、と。
「小説は人生訓でもなければ癒しの道具でもない、感情を波立たすことこそがその本旨である」ということに共感される御仁は、まぁ流行作家だからとかいわずに読んでみてはいかがでしょうか。