Kentaro Kuribayashi's blog

Software Engineering, Management, Books, and Daily Journal.

ばるぼら・著『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書

2002 年 9 月 30 日、「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史 Encyclopedia of Japanese Internet Culture」を一読、面白果てまくり、まったく知らないことだらけだけどこんなにもいろいろあったんだなぁ、それにしてもすげぇ年表だなぁなんつってから 2 年半、待ちに待った『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』をようやっと読むことができました。つーか、いきなり名著過ぎ。上に挙げた年表に注釈つけて一丁上がり、みたいな本ではまったくなく、異様な情報量でくらくらしちゃうってな圧倒本。かっけ過ぎ。この土日はひたすらこの本に没頭して過ごしましたよ。

僕がパソコンを購入し、しばらくしてインターネットにつなぎ始めたのは 2001 年末のことで、年表を読んだのは、先に述べた通り、ネットにつないでまだ一年もたたない 02 年 9 月末。あまりにも知らないことしか書かれてないのに驚き、また面白く思ったのですが、その頃はまだ約 10 ヶ月しかネットを見ていないのだから、そんなもんだろうと思った。Web 勃興期の熱気、e-zine とかゆってなんかオサレ臭いムーヴメント、UG の時代、初期テキストサイトの隆盛……。その時代、僕はインターネットに触れようと思えばいつでも大学のマシンを介して触れられたはずだったけど、まったく見向きもせずに、かといって他のことで活発に何かやるというわけでもなく、単にぼーっとしていました。

まず最初に思ったのは、単に読み物として無類に面白い! ということだけど、つーか触れようと思えばすぐそこにあったはずなのになんでそれに気づけなかったのだろう、という気分で、なんかもったいないことした、というか、なにやってたんだろなーという後悔的感傷。あん時、なんかのきっかけがあれば、いまもっとインターネットを楽しめたのに、というような。んでも、読み進むにつれ、2002 年以降の、僕も少しは見聞きしているはずの時代についての年表を見るに、そこに挙げられているサイトのほとんどを読んでいないことに気づき、そこで考え直してみるに、90 年代中盤からネットにつないでいても、本書に載ってるサイトのほとんどをスルーしてたに違いない、とも思った。

だからどうだってことではもちろんなくて、読者やサイト運営者、あるいは掲示板等の住人として当事者的な立場にいなくとも、歴史として描かれる事象は楽しいものだし、というか、ややもするとありがちな単なる年寄りの繰り言に陥ることなく、歴史として描き出すことができた本書著者の力量が素晴らしいわけですが。前にも少し書いた気がするけど(そのエントリが見つからない…)、僕が少し見た範囲で本書とも関わることを述べれば、02 年末に起こったいわゆる Blog 騒動を眺めていて、m.e.s.h. のひとたちについて「吹き上がっちゃって、バカみたい」と思ったけれど、「そんなの昔からあるよ!」つって意味もなく煽ったり罵倒したりするひとたちのことがもっと嫌いでした。当事者だけにとって美しい想い出をぐだぐだ語って「最近の若い者は……」としたり顔で説教する年寄り(年齢的にいえば僕より若いひとももちろんたくさんいるけど、精神的にという意味で)。いまもそう思ってるけど。本書が真に優れているのは、そういう無意味な視点をバッサリそぎ落として、歴史記述にひたすら専念しているところにあるでしょう。ようやっと、かつてあった、そしてこれからもあり続けるだろう、あり続けてほしいインターネットの楽しさというのがわかりました。

このような本についての感想を僕の個人的な体験をからめつつ述べるってのは、なんつーかかっこわるいことであるし、先に述べた年寄りの繰り言化しがちな態度であるとは思うけれど、正直ゆってネットにつなぎ始めた頃以前の話は先に述べた通りほぼまったく知らないし、つなぎ始めてからのこともあんまりわからないし、そもそも本書がインターネットにおける個人が作り出してきた文化を主に扱うのであってみれば、ネット好きな個人の視点を元にあーだこーだゆってもまぁいいかな、という気もする、といういいわけ。でも本書は、そういった自分語りとはまったく無縁の立ち位置で、膨大な資料を博捜した上で書かれていて、そこが面白いところなんだけど、というのもさっき書いたな。あと、こういう本の性格上、当然あれが、これが載ってない等の意見が出てくるだろうけど、そゆのはそれについて詳しいひとが書けばいいし、その文章を読みたいと強く思うので、ぜひ書いてくださいお願いします、と思った。