Kentaro Kuribayashi's blog

Software Engineering, Management, Books, and Daily Journal.

総選挙はてな、あるいは、インターネットの可能性

みんな大好きはてなさんが、新サービス「総選挙はてな」をリリースしました。

2005年8月8日、衆院が解散となり衆院選が9月11日投票の日程で行われることになりました。今回の選挙戦は、日本にとって大きな意味を持つ重要な出来事であると考えましたので、はてなアイデアの予測市場の仕組みを使って選挙の行方を予測する試みを行いたいと思います。

総選挙はてな

これは大変面白い試みだと思います。しかし、早くも重大な問題点が指摘されています。公職選挙法第 138 条の 3 に抵触するのでは? という問題です。

(人気投票の公表の禁止)

第138条の3 何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。

公職選挙法第 138 条の 3

条文をぱっと見た感じ、これは明らかにマズイんじゃねーの? 的感想を抱きます。ただ、はてなアイデアの予測市場の仕組みを使って選挙の行方を予測する試みというのが即ち公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表することにあたるのかといえば、それはどうなのかなとは思われるところです。そこから直接得られる利益を最大化することを目的とする者によって構成される市場の仕組みに基づく予測と、選挙運動としての人気投票とでは、参加者が利益を得る目的も方法も異なるからです。

予測市場の仕組みを、従来、市場的な知恵が向かないとされていた、あるいは、試されたことのなかった分野に適用しようという試みは、はてな以前から存在していたりします。たとえば、計画途上でぽしゃってしまったものの「米国防総省、将来のテロ攻撃などについて賭け金を集める市場を構想」という記事に述べられている、テロの予測市場といった例がありました。

「残虐行為とテロリズムに関する、連邦政府公認の賭博場というアイディアは馬鹿げており、グロテスクだ」と28日に計画を明かした議員の1人、ロン・ワイデン上院議員(オレゴン州選出、民主党)は語った。

米国防総省、将来のテロ攻撃などについて賭け金を集める市場を構想

この計画に対しては、人道的な立場に立つ大方の意見は、上の引用とそう変わらないものになるでしょう。しかし、なぜこのような一見馬鹿げた計画が持ち上がったのでしょうか。

市場が「分散していた情報や、さらには隠されていた情報さえも」明らかにする可能性があると述べていた。「選挙結果を予想するような場合における先物市場の優秀性は証明されている。専門家の意見よりも優れている場合もしばしばある」

米国防総省、将来のテロ攻撃などについて賭け金を集める市場を構想

市場はどんな情報収集・分析機関よりも、テロや選挙結果の予測についてさえ優秀であるかもしれないのです。それをはてなという一般的に知られたサービスが「総選挙はてな」などといって提供してしまうところが、インターネットならではというか、それこそまさにインターネットによってもたらされた可能性でしょう。誰もが簡単に、瞬時に参加できるインフラが整備されてこそ現れ得たサービスです。というか、リリースに際しては、当然、上に挙げたような話が念頭にあったのではないでしょうか。

確かに、素人なので正否についてはなんともいえませんが、法律の条文を見る限り、非常にヤバげに見えます。ただ、これからのインターネットが世の中にもたらし得るかもしれないひとつの例として、非常に興味深いと思われるのもまた、事実なのです。