岸政彦『街の人生』
岸政彦『断片的なものの社会学』が面白かったので、同著者のこの本も読んだ。『断片的』にもいくつかあった形式の、インタビューのみで構成された本。今回は著者の考えがほぼ反映されておらず、淡々とインタビューを読む感じ。これはこれでとても面白い。
ただ、こういってもしかたないことだとは思うけど、研究動機の関係上だろうと思うけど、出てくるひとが偏ってくるところに著者の方法に物足りないものを感じないわけではない。この本に出てくる人々は、端的にいって「ふつう」の社会から少し、あるいは大幅に外れてしまっているひとが多い。そうなると、そういう人々が話す内容は、自動的に「面白さ」という意味で底上げされてしまうと思う。
『断片的』の感想ツイートでも少し書いたけど、以前ブログサービスの開発チームにいた時は、ほんとに普通の、そのへんのリーマンとかおばちゃんとか、そういうひとが生活を淡々と書いてほしい、そしてそれこそが最高に面白いのだと思っていたし、そのような話をしたりもしたことがあった。この本に出てくる人々は、そこからは遠い。
『断片的』では、知らないひとのブログを読むのが面白いと書いていたが、例示されるのが異性装者のブログであり、そこには趣向の偏りが明確に見られると思う。まあ、だからといってだめだということはないけれども。
- 作者: 岸政彦
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2014/05/31
- メディア: 単行本
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- はじめに
- ルイス - 国、家族、愛
- りか - 「女になる」こと
- マユ - 病い、尊厳、回復
- よしの - シングルマザーとして、風俗嬢として
- 西成のおっちゃん - 路上と戦争
- あとがき