生きているということ自体が、その味わい嘗め尽くすべき瞬間と我に反る機会の総てに於いて、甘美たりうるし、残酷なほど甘いものである。此岸を「彼方」として生きる明確な意思さえあれば、人生は「甘美」な奇跡で満ち溢れる。
『甘美な人生』福田和也・著、ちくま学術文庫・刊 p.212 より
残酷なまでの甘美さにどれほどのひとが耐えられるのだろう。ましてや彼に於いては。
甘やかな/残酷な味に触れることなく、それどころか、積極的に貧しさについているのではないか。その自堕落を「放蕩」と勘違いすることもあって、自らの薄弱ぶりにうんざりするのだ。