阿部和重『シンセミア』読了
『シンセミア』読了。近年は、本などまるで読むこともない野蛮な生活態度をマズいとは思いつつ改める決意をだらだらと先延ばしにしてインタネットなどにうつつを抜かしていたのだし、折からの体調悪化という事情もあり、活字を眺めていること自体がキツくてなかなかに大変な読書でした。つまり、長かった…。
感想…。というか、非常に皮相的な紹介を述べると、これまでの阿部小説的なすっとぼけた感じ(いい加減で投げ遣りな感じ)のフレーズでもって過度に類型化することで生じるおかしみを与えられた諸人物がミステリ的なドライヴ感でもって大活躍する様が、今回は大々的に「神町」という血縁・地縁や歴史的な因縁のはびこる田舎町を舞台として数十人の群像劇として描かれるのであってみれば、すでにあちこちで述べられている通り、大江健三郎・中上健次(それと、なんとなく村上春樹も)といった作家たちの諸作を当然思い出すのだし、まぁそんなことを思い出さずとも、ともあれ前作までを好んで読んだ読者であれば今回はそれまで以上に楽しめるはずで、つまりは面白いからみなさんもぜひ読むといいと思います…。