Kentaro Kuribayashi's blog

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福井健策・著『著作権とは何か - 文化と創造のゆくえ』

著作権とは何か - 文化と創造のゆくえ
  • 福井健策
  • 新書
  • 4087202941
  • 2005/05
  • ¥714
  • 集英社

Copy & Copyright Diary にて、本書は著作権について考える上でお勧めの入門書と紹介されていたので、気になって購入しました。

著作権って、なんとなくはニュアンスでわかっているつもりでも、「権利の束」などといわれる通り、多数の権利の集合状態になっていて、複雑でわかりにくい。本書の構成は、定石通りそもそも著作物とは何か? というところから始まり、著作権が含む各種権利についての説明を行っていくというものなのですが、そのいちいちが具体的な美術や映画、文学等の作品を引き合いに出して説明されていて、とても分かりやすいし大変とっつきのいいものになっています。

弁護士さんが書いてる本なので、実務一辺倒で知財ビジネスでガリガリやっていきますよ! 的な本なのかなぁとも読む前は思ったりもしたのですが、そもそも著作権保護を、文化芸術の発展に寄与することを目的とする社会実験として捉え、実際の裁判で争われた論点をバランスよく解説している点が、とても面白かったし、ためになりました。法律を扱っている本なのに、結論を出すのに微妙な論点については「?な気がします」などという言い回しが数回登場したりするあたり、結論を急ぐひとには向かないと思いますが、この問題についてこれから考えていこうというひとには面白いんじゃないかなぁと思いました。

あと、先にも書いた通り、一貫して具体的な作品を挙げて説明する書きぶりが分かりやすくてすごくいいと思うのですが、その取り上げる作品が、いかにもエライ先生が例に出しがちな高尚なものばかりでは全然なくて、たとえばパスティーシュの是非を論じる箇所で、ポルノ映画かつ小津安二郎へのオマージュであるという、周防正行監督のデビュー作「変態家族 兄貴の嫁さん」を取り上げて説明しちゃうあたり、かなり型破りな感じでした(w