Kentaro Kuribayashi's blog

Software Engineering, Management, Books, and Daily Journal.

阿部和重・中原昌也『シネマの記憶喪失』他

本 blog 読者の皆様のおかげでいただいたアサマシギフト券でもって、一挙に買いまくり(もちろん、全部をアサマシ収入でまかなえるわけもなく、手出し分の方がずっと多いのですが)。

シネマの記憶喪失
  • 阿部 和重、 中原 昌也
  • 文藝春秋
  • 2007-01
  • ¥ 2,200
  • Book

雑誌「文學界」で連載されていた、阿部和重さんと中原昌也さんによる映画時評対談をまとめたもの。例によって、阿部さんがあれこれと分析的な議論をするのに対して、中原さんが膨大な映画的記憶に基づく断定的なフレーズをぽんぽんと発しまくるやりとりが面白いのだけど、なんつか、映画をたくさん観ているひとに共通してすごいなぁと思うのは、よくもそんなにあれこれ憶えているものだなぁとかそんな。バカみたいな感想だけど。
快適生活研究

このエントリをうpってから読む。ほんと楽しみだー。
夢を与える

綿矢りささんの芥川賞受賞第一作となる、3 年ぶりの新作。前 2 作が若い女の子を主人公にした一人称小説だったのに対して、今作は、子役デビューした女の子が芸能界であれこれもまれたりもまれなかったりするのを三人称で描いている。
個人的には、出てくるキャラクタ全員が非常に違和感のある、端的にいって嫌いなタイプの人間ばかりなのだし、筋自体にもまったく興味が持てないために、とりあえず読んでみました程度の印象しかないのだけど、しかし、たとえば正晃がスポットライトを浴びてまぶしくて顔をしかめたときに鼻がむずがゆくなってくしゃみをしてしまうのに主人公が共感するとことか、印象に残る場面がいくつかあった。
イノベーション悪意なき嘘

小著ながら、昨今語られる「イノベーション」なるものの成り立ちを、歴史的な文脈において解き明かしていこうという大望を抱いた本。品質管理・保守込みでパッケージングされたユニバーサルサービスから、アンバンドリングによってもたらされるベストエフォート・部分最適のイノベーションの世界への変遷を描き、それらイノベーションなるものは短期的な視点しか持たず、長期的視点にたってみればイノベーションに対する対抗的な見方(対抗イノベーション)が必要なのではないかとしめくくる。
まぁ、技術者ならぬ僕にはなかなか判断の難しい話ではあるものの、たとえばインターネットにおける様々な技術的・言説的意匠の盛衰を振り返るに、こういう大きな視点をもってことを見返してみる必要もあるだろうなぁとは思う。
渋滞学
  • 西成 活裕
  • 新潮社
  • 2006-09-21
  • ¥ 1,260
  • Book

ogijunのあとで書く日記 - 西成活裕『渋滞学』」経由で購入。あとで読む。
情報時代の見えないヒーロー[ノーバート・ウィーナー伝]
  • フロー・コンウェイ、 ジム・シーゲルマン、 松浦 俊輔
  • 日経BP
  • 2006-12-14
  • ¥ 2,940
  • Book

サイバネティクスで有名な、ノーバート・ウィーナーの伝記。まだいまんとこ、MITの先生になったところあたりまでしか読んでいない。しかしまぁ、ウィーナーがたまたま超天才だったってことなのかもしれないけど、昔の神童ってのはスケールがでかいなぁと思う。
生命記号論―宇宙の意味と表象
  • ジェスパー ホフマイヤー、 Jesper Hoffmeyer、 松野 孝一郎、 高原 美規
  • 青土社
  • 2005-11
  • ¥ 2,310
  • Book

ものすごくたくさんのページに折り目をいれてはいるのだけど、正直ほとんど附に落ちない議論ではあった。記号/対象/観測者の関係があらゆる場面でくりかえされることにより、攻殻機動隊用語でいう「ゴースト」がいつしか創発したのだ、みたいな話なのかなぁ。ずいぶんオカルトチックに思えるけど、どうなんすか、これ。西垣通先生のゼミでの読書会レジュメ等読んで、もすこし考えたい。

技術がある「特異点」を突破したとき、現在からは予想もつかないような途方もない変化が起こる!!!!みたいな本らしい。なんか初っぱなからいきなり疲れちゃって放置中。まぁ、ぼちぼち読もう。
デザイニング・インターフェース ―パターンによる実践的インタラクションデザイン
  • Jenifer Tidwell、 ソシオメディア株式会社、 浅野 紀予
  • オライリー・ジャパン
  • 2007-01
  • ¥ 3,990
  • Book

パラパラと読んでる。この本や、「WEB+DB PRESS」で紹介されていた "Yahoo! Design Pattern Library" 等によって、なんとなくあるいは言語化されないセンス等に基づいて作られてきたインタフェイスデザインが整理されたり、思考や議論の前提を共有できるようになったりするのは、ほんと素晴しいことだなぁと思ったり。

宮台真司氏の、'94 〜 '99 年にかけての対談・鼎談・シンポジウム等でのダイアローグのうち、書籍に収録されていないものを集めた分厚い本。この時期が宮台氏の言説を最も追いかけていた時期なので、当時読んだものも多いのだけど、懐かしいなぁと思うとともに、いまでも全然有効な話がたくさんあるわけで、非常に味わい深い本。
影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか
  • ロバート・B・チャルディーニ
  • 誠信書房
  • 1991-09
  • ¥ 3,465
  • Book

他人の承諾を引き出すテクニックのパターンを、学説・参与観察の両面から解き明かしていく本書は、その教科書チックな外形とは裏腹に、非常に面白くて一気読みしてしまった。個人的には、「コミットメント/一貫性」のあたりが、最も面白かったし、自分を省みて、ハッとさせられもした。
騙されない/騙すために、諸々の基本的テクニックを知ることができて実用的な本でもあるとともに、承諾を引き出すのテクニックはなにもセールスマンと客のような、あるいは洗脳者と信者のような関係のみでなく、たとえば終身雇用等の労務管理や公的年金制度といった社会的制度にだってあてはまるような話だったりするのであってみれば、広い場面で示唆的な話に富んだ本なのではないかと思う。
生殖の哲学

小泉義之さんの本は『ドゥルーズの哲学 - 生命・自然・未来のために』しか読んだことがないのだけど、これがほんと異常傑作で、激しく影響を受けた。んで先日、下記『モノ・サピエンス』なる本を読み、そのあまりのどうでもよさにげんなりして、そういや読んでなかったなと思って注文したのが本書。生むことができるという、生物の根源的力能をまず肯定するところから始まる著者の生殖の哲学に、激しく共感する。どうでもいい本を読む暇があったら、本書や前掲『ドゥルーズの哲学』をこそ読むべきであると、強く主張したい。
意味の論理学 上 (1)

意味の論理学 下 (3)

アンチ・オイディプス(上)資本主義と分裂症

アンチ・オイディプス(下)資本主義と分裂症

ちょwwwなにこのドゥルーズ新訳・文庫祭りwwwww 興奮的過ぎて、ついつい全部買っちゃったじゃないかwwwww
楽しみに読んでいきたいところ。
モノ・サピエンス 物質化・単一化していく人類
  • 岡本 裕一朗
  • 光文社
  • 2006-12-13
  • ¥ 798
  • Book

特に新味もない話を「もしかしたら、ドギツイ表現と他人事のような記述を見て、戸惑う方もいらっしゃったのではないでしょうか」(p.264 あとがき)などと、ただ著者ひとりのみが大ハシャギで述べ立てている、心から寒々しい気分にさせられる本。そのいちいちについてもあげつらいたいが、面倒なので措くとして、とりあえず事実に反するところのみひとつ挙げる。

ところが、八〇年代の消費社会では、一般の庶民までもが「見せびらかしの消費」に精を出すようになりました。次の記述を読むと、当時の雰囲気が伝わってきます。

と、本書 p.42 において述べつつ引かれるのが、ジャン・ボードリヤールの『消費社会の神話と構造』。あのねー、これリリースされたの '70 年ですよ。'70 年に書かれたボードリヤールの記述が '80 年代の消費社会にもあてはまるよねっていう話なら理解可能だけど、そんなことなんにも説明されてないじゃん。いまさら「カラスの勝手主義」なんて、時代的センスのかけらも感じられない標語を掲げたりするような歴史感覚なのだから、それが '70 年だろうが '80 年だろうが、どうだっていいよってことなのだろう。というかまぁ、単に「消費社会」って印象でつなげただけなんだろうけど。

犯罪不安社会 誰もが「不審者」?
  • 浜井 浩一、 芹沢 一也
  • 光文社
  • 2006-12-13
  • ¥ 777
  • Book

良書過ぎる。もうなんでもいいから、犯罪がどーのとか、地域コミュニティを復活すべき!みたいなひととか、まずは本書を読んでくださいよ、お願いだからさー。
ひとつ驚いたこと。90 年代後半に法学部の学生だった頃、死刑制度を調べていたときに、日本の無期刑は実は 15 年ほど経つと仮釈放され、その実態は有期刑なのだという話があって、死刑制度反対論者のひとたちの中には、死刑を廃止して、無期刑を本当の「終身刑」にするべしという議論をする者があった。その是非についてはともかくとして、本書を読むまで無期刑の運用は当時もいまもそのままだと思っていたのだけど、

刑事司法関係者を含めて多くの人が誤解しているのが、無期刑受刑者の多くが十五年程度で仮釈放になるという根拠のない噂である。
これは、『犯罪白書』を読めば誰でもわかる事実であるにもかかわらず、元裁判官や元検事を含む、多くのコメンテーターと言われる人たちが平気で「無期刑といえども十五年程度で仮釈放になる」と発言するのを聞くことがある。
(グラフの説明等・略)
無期刑は運用上、終身刑化しているのが現実である。

とのことで、まさに蒙を啓かれた重いがした。詳細については、『犯罪白書』なり本書なりにあたってください。


地域情報化自体は、まぁ大切だろう。また、いろいろと挙げられている事例についても、知らないことが多く、大変ためになった。しかし、地域情報化が求められる理由として、団塊の世代が地域に戻ってくるという問題を挙げるのはまぁいいとしても、上述『犯罪不安社会』に述べられているような統計的な事実を本文中にはっきりと述べているにも関わらず、なぜかそのことをあっさりと忘れ去って「子供の安全を守る総力戦」などといってのける知的不誠実さ。本当に許し難い。
いかに地域情報化が大切なものであろうとも、そのような無根拠に基づくものなのであれば、自分たちの欲望のために子供をダシに使っているという点において、ロリペド野郎が子供を性的欲望を満たすダシに使うことと変わりない。そんな薄汚い発想に基づく地域情報化には与することはできない。上記『犯罪不安社会』や、その共著者・芹沢一也氏による「何のための防犯パトロール?」というエントリを読み、猛省すべし。

なんだっけな、買ったきっかけは忘れた。400 ページあり、新書にしてはかなりと厚い。あとで読む。
汎音楽論集

'91 年に亡くなったギタリストの故・高柳昌行氏の評論集がリリースされた!!!これは大変にすごいことです!!! '50 年代の「スウィングジャーナル」誌上での、若気の至り的にアツイ文章なんかも収録されていて、まだ最初のあたりしか読んでないけど、かなりと興奮的な事態になっております。
フラワーガール



高柳昌行さんの音楽が、CD としてあれこれと復刻されていて、リアルタイムを知ることができなかった者としては、うれしい限りです。

んー。
闇金ウシジマくん 7 (7)
  • 真鍋 昌平
  • 小学館
  • 2007-01-30
  • ¥ 530
  • Book

わりと面白くなってきた。