盛田茂『シンガポールの光と影』
2015年11月24日付の日経新聞で紹介(シンガポール映画の気骨 厳しい検閲にもひるまぬ表現者たち100人以上を取材 盛田茂 :日本経済新聞)されていた著者の本が刊行されていたので、購入して読んだ。
シンガポールといえば、お国柄や実際に行って感じたイメージから、さぞかし文化的に不毛な国なんだろうなあと思っていたのだが、豊穣とはいえないのは確かだろうけれども、映画を通じて多民族・言語国家の実際や社会問題などを、検閲をかいくぐったり、時には検閲当局と交渉したりしながら強かに表現を行っている映画作家が多数おり、また、その作品も多様なものであることを知り、不明を恥じた。
本書は、第1部でシンガポールにおける映画事情を歴史を概観しながら述べた後、第2部ではシンガポール社会・文化の諸断面を紹介しつつ、それを描き出す作品を紹介するという構成になっている。単純な社会反映論というには、社会・文化への目配りは幅広く、シンガポールという国についての理解を深めるとともに、映画情報も知ることができるという意味で、とても役に立つ本であると思えた。
- 作者: 盛田茂
- 出版社/メーカー: インターブックス
- 発売日: 2015/12/07
- メディア: 単行本
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- 推薦の辞 祖国のために身銭を切る人たち(内田樹)
- はじめに
- Ⅰ部
- 第1章 シンガポールの歴史
- 第2章 シンガポール映画の歴史
- 第3章 文化・芸術政策と映画産業推進政策
- Ⅱ部
- 第1章 表現の自由と規制の間で
- 第2章 ノスタルジーと歴史再評価
- 第3章 言語と大衆文化
- 第4章 宗教と民族の歴史
- 第5章 教育と階層の固定化
- 第6章 徴兵制と国民意識
- 第7章 LGBTと伝統的家族観
- 第8章 加速する少子高齢化社会
- 第9章 外国人労働者と差別意識
- あとがき
- 参考文献
- 事項索引
- 人名索引