ペパボの2014年上半期エンジニア評価について
ペパボの新しいエンジニア評価については、ペパボのエンジニア評価制度をパワーアップしたで既にお知らせしたところです。さて、今回その評価が終わり、総評を書いたので、さしつかえない範囲で公開します。
ちなみに、技術上級職については既に「ペバボのエンジニア職位制度のアップデートについて」で紹介しています。そちらも御覧ください。
制度の概要
そのエントリにもある通り、新しい制度では、以下の特徴があります。
- エンジニア全員を、エンジニア集団である技術基盤チームが評価する
- GitHubに評価用の提出資料をまとめpull requestを出してもらい、それに基いて、結果も含めて全員にオープンな状態で評価する
あらためて上記のエントリを引用すると:
今回の制度は、上述の専門職としての評価制度はそのままに、既存の半期ごとの目標設定 → 評価サイクルの中に、エンジニア的観点をより盛り込んでいこうというものです。エンジニアであろうがなかろうが、一般に、事業目標をブレークダウンしたものが個々人の目標 → 成果になっていくわけですが、そうしたプロセスにおいて、より多様な観点からアウトプットの生産性を向上させていくには、やはりそれを現に行う個々人(ここではエンジニア)の特殊な観点も必要と考えます。
そうした「観点」について、今回の制度はエンジニア全般に対して適用されるものなので、みんなにとって納得感のあるものでなければなりません。そこで、エンジニア全員に対して行ったアンケート結果を元に、技術基盤チームにおいてとりまとめ、以下の画像にあるようないくつかの軸を抽出しました。その過程で、自然と「大切にしてほしい3つのこと | 採用情報 | GMOペパボ株式会社」にあるような3軸にすんなりとハマったので、それをそのまま使うことにしました。
本エントリの目的
そのような、いってみれば内輪の話の共有を、ある意味わざわざ行う目的は、エンジニアとしての将来をあれこれと検討している社外のエンジニアのみなさんに対して、ペパボについて考慮の範囲に入れる材料としていただき、ひいてはよい形で入社していただくことで、ともに会社の成長を実現していきたいと考えるからです。
評価過程
- 新しいエンジニア評価制度について、経営会議を経て決定
- 4/17,18 福岡、東京で説明会
- 中間の成果について記入告知
- 評価スケジュール告知
- 7/4 資料記入締め切り
- 7/7〜7/9 福岡にて面談
- 7/14〜7/18 東京にて面談
- 上記面談後、最終結果をantipopの責任において決定
評価基準
以下の基準に基づき、各人の等級に沿った期待との比較のもとで、評価を行いました。
- みんなと仲良くすること
- まわりを巻き込もう
- 遠慮はしない
- ファンを増やすこと
- 形にしよう
- 技術はユーザーのため
- アウトプットすること
- なんでもオープンに
- まず手を動かそう
詳細な内容については、スライド「ペパボのエンジニアの仕事を「もっとおもしろく」する」に掲載した通りです。
評価指標について
指標自体は、これまで同様、以下の4種類です。
- S: Excellent 期待を上回る
- A: Good 期待通り達成
- B: Average 普通
- C: Poor 悪い
この時、「期待」とは何かということが問題になります。評価者は、期待とは、職務上求められること以上のことを成し遂げてほしいという思いであると認識しています。イメージにすると、以下の図のように考えています。
すなわち、職務上求められていることを行ったというのはB
、上記の定義における「期待」通りであればA
という結果をつけています。なぜそのように「期待」を捉えるのかについては、A
が昇給と結びついていることからして、明らかでしょう。
総評
新しい評価制度を運用し始めて、まずはひとサイクルまわりました。いろいろと不足があってみなさんにはご迷惑をおかけすることもありましたが、改善するべき点ははっきりしましたので、よりよい制度となるよう今後も改善を続けるとともに、ひいては業績向上に資するものとしていきたいと思っています。
よかったこと
さて、2014年上半期評価をふりかえってみたいと思います。まず、評価者としてやってよかったと思っている点について。
提出資料について
今回の制度から、シニア、アドバンスドシニアエンジニア同様の資料を提出するようにしたのですが、そのことで、以下の良さがあったと思います。
- 毎日の日報でのアウトプットの質・量が向上した
- 資料フォーマットをあらたに策定したことで、半期ふりかえりの質・量が向上した
ほうぼうで何度もいっていますが、評価制度というのは、単に最終的な結果を確認すればそれでよいというものではありません。そこにいたるまでのアウトプットを改善しなければ、最終的な結果がよくなることはありえませんし、ひいてはそれを次期の改善につなげなければ業績向上に資することもあり得ません。
その意味で、エンジニアのアウトプットの質・量が向上したのは目に見えてよかったことだと思いますし、他の職種や役職の方々にも真似していただきたいと思います。
エンジニア目線の評価
エンジニア集団である技術基盤チーム主体の評価制度になることで、面談等を通じてのコミュニケーションにおいて、これまでとは違った視点が入ることになり、以下の良さがあったように見受けられます。
- エンジニアとしてどうあるべきか、今後のキャリア、技術的側面から評価が行えた
- 上記6つの評価軸に基いて、適切な評価基準を各自の中に持てるよう働きかけが行えた
エンジニア目線での評価ということで、技術的な詳細に気を配って評価を行えたのは、この制度の一番の利点でしょう。また、エンジニアとして事業にどう関わっていくべきかについて議論を行い、また、こちらからも考えをお伝えできたのもよかったです。
また、これはたくさんのひとにお話していますが、自己評価は適切に持たなければなりません。自己評価が低過ぎるのも高過ぎるのも、よりよい成果を出すに際して、マイナスになると考えます。そのような考えに基いて、自己評価と1次評価とのバランシングをできたことも良かったと思います。
改善してほしいこと
次に、改善てしてほしいことについて。
評価にのぞむ姿勢
どんな評価でもそうである、あるいはそうであるべきだと思いますが、この評価も単に「上」のひとが一方的に点数をつけるようなものではありません。
評価の説明会の時から再三述べているように、日々の振り返り、定期的なふりかえりを通じて、最終的なアウトプットを高めるのが制度の目的です。そして評価の場に、そのアウトプットを持ち込んで、よりよい評価結果というアウトプットを、評価者と被評価者との協働でつくり上げる、そういうものとして制度をとらえてほしいです。自分で成果を説明し、説得するぐらいのつもりで臨むのが望ましいです。
そういう姿勢で臨むことにより、前述したような適切な自己評価が可能となり、6つのそれぞれの軸において、自分の果たすべきこと、それが誰のどのような価値になっていくのかというストーリーが、自分の中で明確にできあがっていく。そのことでよりよい成果と、結果としての評価につながるのだと思います。
アウトプット
「みんなと仲良くすること」「ファンを増やすこと」とくらべて、「アウトプットすること」が全般的に評価が低めになっています。面談の中で多くお話した内容を、以下にまとめておきます。
アウトプットといった時に、たとえば外部のカンファレンスで技術発表を行うというようなものが想起されると思います。もちろん、それはそれでアウトプットとして高く評価しますが、そのイメージだけにしばられるのはそれはそれでよくないと考えます。たとえば、ちょっと考えるだけで、外部イベントでの発表以外にも、これぐらいはできることがあります。
- 内部: GitHub/GH:EのissueやWikiや社内ブログにチーム内/チーム外で役立つ技術情報を書く、社内勉強会を行う、コードレビューやissueで議論をする
- 外部: 技術に関するブログを書く、OSSにコントリビュートする、OSSを開発する、社外のエンジニアと交流する
他にもあげていけばキリがないほどあるでしょう。こうしたことを多くのみなさんが積極的に行っていけば、エンジニアの仕事ぶり、ひいては全社的なそれが飛躍的によくなっていくものと確信しています。
「エンジニアがアウトプットすべき理由 | 外道父の匠」というエントリも是非ご参照ください。評価者はこれに100%同意します。
まとめ
エンジニア個々人としては、より意義のある働き方ができるように、会社としては結果としての業績向上のため、この制度をよりよく運用していきたいと思っていますので、上記を各自でよく含まれた上で、下半期以降も張り切ってやっていきましょう。よろしくお願い致します。
というわけで、ペパボではこんな感じの制度を運用しながら、エンジニアがよりよく働ける環境作りを大切にしつつ、ひいてはそのことが事業の成長につながることを確信して日々やっていっています。興味のあるかたは、是非以下をご覧になっていただきますよう、お願いいたします。もちろん、僕個人に直接ご連絡くださってもかまいません。