Kentaro Kuribayashi's blog

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伊藤隆『歴史と私 史料と歩んだ歴史家の回想』

読みたかった本がKindle化されてるのを見つけたので、さっそく買って読んだ。僕のような単に本を読んでるだけの者はつい、何かの知識に対して本があることを前提としてしまうわけだけど、著者の、史料そのものをまだ生きている本人や遺族をたずねてまわって発掘していく執念のすごさに、ひたすら感嘆。この本の半分以上は、ずっとそういう話が書かれている。歴史家はすごいなあとあらためて思う。

その他、回想録なのでいろいろと面白いエピソードが紹介されているのだが、たとえば平泉澄のインタビューで彼が日本等を持ってポーズしてみせた話、矢次一夫との岸信介インタビューで矢次がしゃべりまくるものだから鬱陶しく思っていたとか、御厨先生との「絶縁」の話など。「新しい教科書をつくる会」のことは、触れてはいるけど中身にはまったく及んでいなくて、よくわからかった。

オーラル・ヒストリーというのは、現代的な手法なんだろうなあと思うけど、さらに時代が進んで、いまの人々が「歴史」になっていく時に、「史料」というのはどういうものになっていくのだろうなあと思う。いまどき日記をちゃんとつけているような政治家がいるのだろうか。いたとしても、どんどん電子的な記録や、ネットにおけるもの(ブログとか)になっていくだろうし、後世の歴史家は大変そうだ。

歴史と私 史料と歩んだ歴史家の回想 (中公新書)

歴史と私 史料と歩んだ歴史家の回想 (中公新書)

  • まえがき
  • 第1章 共産主義との出会いと訣別
  • 第2章 昭和史へ―史料収集事始め
  • 第3章 木戸日記研究会のことなど
  • 第4章 革新とは何か
  • 第5章 ファシズム論争
  • 第6章 近衛新体制をめぐる人々
  • 第7章 戦前・戦中・戦後の連続性
  • 第8章 茨城県議会史と東大百年史
  • 第9章 明治の元勲から岸・佐藤まで
  • 第10章 昭和天皇崩御
  • 第11章 インタビューからオーラル・ヒストリーへ
  • 第12章 竹下登、松野瀬三、藤波孝生―オーラル・ヒストリー①
  • 第13章 海原治、渡邉恒雄、宝樹文彦―オーラル・ヒストリー②
  • 終章 史料館の挫折と人物史料情報辞典
  • あとがき